そば屋のおやじのひとり言

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                    『天然にがり』

皆さんは、『にがり』と聞いてまず何を思い浮かべられるでしょうか?

おそらく『豆腐作るときに使うんじゃないの?』という人がほとんどだと思います。
しかし、西洋では母なる液『マザーカリー』としてずいぶん親しまれてきたようです。

『にがり』は、塩の生産時にできる副産物です。
海水から水分を抜いて塩を結晶させるわけですが、塩の結晶が終わると最後に琥珀色の液体が残ります。要するに、海水から塩分と水分を抜いて海中に含まれるミネラルを凝縮させた液体で、主成分は塩化マグネシウムですが、塩化カリウム、塩化カルシウムなど100種類以上の無機塩類=ミネラルを含んでいます。
また、海中には、地球上に存在する100種類以上の元素のうち、約80種類が存在し、人間のからだを構成する34種類の元素のほとんどが海中に含まれています。

昔から塩の生産が盛んな地域では『にがり』は切り傷、擦り傷の消毒、皮膚病の治療などに利用され、万能薬として重宝されてきたようですが、最近その『にがり』の持つさまざまな効能がテレビ、雑誌などでたびたび紹介され、いまちょっとしたブームになっているようです。インターネットなどにも、驚くほどの効果が紹介されています。

そんなに良いものが、なぜ今まで知られていなかったのでしょうか?
それは国の規制により、平成9年まで自然製塩が禁じられていたため、『天然にがり』そのものが一般市場に出回っていなかったためです。

『苦汁』と書くその液体は、その字のごとくなめると非常に苦いのですが、昔から豆腐を作るときの凝固剤として利用されてきました。大量生産の時代においては天然の苦汁が入手困難であったこと、技術的に非常に難しかったことなどの理由で、人工的に作られた塩化マグネシウムを凝固剤として使用することが多かったのですが、最近のグルメ志向や味のよさなどから一部のお豆腐屋さんでは再び『天然苦汁』を使用するところも増えてきたようです。

                『お茶はどこまで入れてよいのか?』
実に興味深い新聞記事を目にしたのでご紹介いたします。

お茶は、普段家庭で飲む方法で何煎目まで有効成分が残っているのか知りたいところであったが、静岡県立大学の食品衛生学研究室の増田先生が最近実験した結果次のような事がわかったとの事。(静岡新聞に掲載)


カテキン濃度、坑酸化性、ニトロソアミン生成抑制率を一煎目、二煎目、、八煎目まで急須でいれて測定したところカテキン濃度は二煎目の方が高くその後は三、四煎目と急激に減少。
坑酸化性は二、三、四と急激に減少、またニトロソアミン生成抑制率は四煎目まで大きな変化なく殆ど同じで推移。
実験では八煎目まで成分は残り生理活性が有することがわかったが美味しさを考慮すると四煎目までが適当としている。

私がこの結果に注目したいのは過去にも実験は行われているが殆どが実際に飲まれているお茶を対象にしている方法ではなく口に出きるお茶を測定したという点である。


用語解説

※一煎目(新しくお茶を急須に入れお湯を注いでだした1回目のお茶)
 二煎目(一煎目を出した後にまたお湯を注いでだした2回目のお茶)

※カテキン
緑茶に含まれる成分というと、苦みの成分であるカフェインがよく知られているが、もう一つ、渋み成分になるのがこのカテキン(タンニンの一種)で、その抗酸化作用によって活性酸素の害を防ぎ、発がんや老化、動脈硬化による血圧上昇を抑制するなどの効果が注目されているが、このほか細菌の繁殖を防ぐ抗菌作用と抗毒素作用があって、食中毒予防にも効果
があることがわかり、さらに最近、このカテキンを与えると、慢性胃炎の原因になるヘリコバクター・ピロリ(が死滅することが判明し、緑茶を常用すれば胃がん予防につながるといわれている。事実、お茶どころである静岡県のがん死亡率は全国平均に比べて低い。


※ニトロソアミン
 魚介類に含まれる二級アミンと野菜や唾液の亜硝酸とが胃の中で反応してニトロソアミンという発ガン性物質を作る。緑茶を一緒に摂るとこの発ガン性物質を抑制できる。
                                                       資料提供 お茶きんさん

                     『平均寿命』
私の祖母は、来年の4月で満100歳になる。もうすぐ長寿番付にも名前が出てくるかもわからん。

そこで、人間の寿命ってどのぐらいなのかと思い調べてみた。

すると、おばあちゃんが生まれた100年前(明治36年)の平均寿命は44歳だった。
平成12年の平均寿命が男77.72歳・女84.60歳なので、なんと2倍近くに伸びてることになる。

明治時代〜大正時代は、だいたい40歳から45歳で推移しているが、昭和に入ると急速に平均寿命は伸びている。
特に、第二次世界大戦後(昭和20年以降)著しく、30年後の昭和50年には、早くも男71歳・女76歳と長寿国に名前を連ねてしまった。これには、いろいろな要因が考えられる。
まずは、昭和20年以降、日本が戦争に武力参戦していないこと。医学の進歩。経済大国へ成長したことによる生活レベルの向上・安定。

ほかにも考えられると思うが、本来の人間の寿命って本当にこんなに長いのか?

大自然の中での生活で、動物の本能・役割りが『種』を後世に伝える事と考えると、30年もあれば充分だ。
実際、15歳にもなれば、ほとんどの人間のからだは『種』を残せる状態になるのだから。あと哺乳動物だから、物心つくまでの育児期間と、生きるすべを伝授したとしても15年もあれば充分だろう。
さらに、人間は、現在 動物の中の過当競争で、トップの位置にいるが、もしほかの動物に取って代わられるようなことになると、平均寿命はもっと下がるかもわからん。

ということはあれか?平均寿命を10歳も上回る私は、とっくにリタイヤして悠々自適な年金生活送っててもいいってことか?

                    『日本の頭脳が危ない』
中村修二 という人をご存知だろうか?

ピンとこない人がほとんどだろうが、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授であり、今 最もノーベル賞に近いといわれている人だ。

青色発光ダイオード(LED)を発明した人なのだ。

ほら、今あなたが持っている携帯電話に青く光っている部分がないだろうか?  解りやすく言うとそんなところに使われている。
もともと発光ダイオードは、電力消費量が少なく、耐久性にすぐれている。赤色・黄色の発光ダイオードはすでに実用化されているが、この色だけはなかなか難しかった。この色が実用化されたことによって『光の三原色』がそろうことになり、明るい白色が作り出され 将来 蛍光灯や白色電球に取って代わる色になる可能性が高いといわれている。

だが、この青色発光ダイオードの特許所有権は、もめにもめて裁判にまでもつれ込んでいるらしい。

中村修二教授は、現在 この技術の開発当時勤務していた日亜化学工業を相手に訴えを提起しているが、このニュースは新聞、 経済雑誌、TV等に大きく取り上げられ、世間の大きな注目を浴びている。

中村修二教授は、日亜化学に対し、青色発光ダイオードの製造において極めて重要な製造装置に関する特許に関して、

  (1)開発者である自分に特許権が帰属する ことを主張し、不当利得として1億円の支払いを求め、さらに、

  (2)仮に特許権が開発当時の使用者である日亜化学に帰属するとしても、「相当の対価」 (特許法35条3項)が支払わ    なければならない、として20億円の支払を求めている。(いずれの請求も権利の一部についての請求…一部請求…で    ある。)

すごい金額だが、もし将来白色電球に取って代わることになると、それだけで数兆円市場に発展するといわれているのだ。

1993年に実用化に成功した日亜化学工業は、それまで売上高200億に満たない中堅企業だったが、急激に業績を伸ばし、2000年12月期の売上高は600億円台を突破し、2001年度には900億円を突破することが確実といわれている。

だが、しかし、BUT、中村教授に支払われた報酬は数万円だったらしい。

このように日本においては、従業員が大きな発明・開発を行ったとしても、十分な報酬が与えられないまま会社が特許をはじめとする権利を取得してきた 。日本における知的所有権はいったいどこにあるのか?
こんなこと許してたら、優秀な人材はすべて海外に流出してしまう。中村教授もアメリカに永住するといっている。

今回の訴訟は、そのような日本の報酬制度に見直しを求めるという意味でも極めて重要なものとされている。


                 『マクドナルドが残した爪あと』

デフレの時代と呼ばれるようになって、もうどのぐらいが過ぎただろう。
特に外食産業におけるデフレは、マクドナルドのハンバーガーに始まり、吉野家・すき家の牛丼戦争、低価格フミレスのガスト、同じく低価格居酒屋の和民と数え出すときりがない。

これだけ値下げされると、出石の皿そばも本当にこの価格でいいのかと、少し不安にさせられてしまう。
しかし、マクドナルドが、『59円バーガー』を発売したことにより、ちょっとだけ底が見えたような気がするのは私だけではないと思う。

ある雑誌のアンケートで『59円バーガー』は、平日半額の『65円バーガー』のときと比較して、インパクトがかなり小さいという結果が出た。
消費者500人に対するアンケートなので、どこまで信用性があるかという疑問は残るものの、平日半額『65円バーガー』を打ち出したときと比べると『59円バーガー』はそれほどでもないとした人が47.6%とほぼ半数を占め、あまりない14.2%とした人を加えると6割以上が、『59円バーガー』には前ほどのインパクトは感じていないという。

確かに、半額というコピーにはひかれる。
何をかくそう、私も当時は10個単位のかため買いをし、冷凍保存しレンジでチンして食べていた。
しかし、『59円バーガー』もちょっと考えるとすごいよ。原価率なんか50%?60%?食品にかかわったことのある人なら?マークが頭の中に100個ぐらい出てくるじゃないの。

でも単純に考えて、『それなら今まではどうだったの』って消費者は思うよね〜。
実際には、この価格を実現するために、どれだけ“ち密”な計算がなされて、たくさんのスタッフが想像もできないようなストレスに襲われたんだろうけど、消費者にはそんなこと知ったことじゃない。

だけどちょっとまずいかなと思ったのは、藤田田社長が『これから日本はインフレになる』とデフレ終結宣言をして、『65円バーガー』を80円にする実質的な値上げを行い、客数が激減すると今度は59円まで値下げしたこと。
その間、ハンバーガー自体の付加価値を変えることなく、短期のうちに値を動かした。

これは消費者をなめてる。 素人の私が見てもそう思う。 今時の消費者はそんなに甘くない。

それでは、『59円バーガー』は適正価格なのか?
これもインターネットによる一般消費者500人に対して行ったところ、1位80円(23.8%) 2位100円(20.2%) 3位60円(15.8%)と言う結果が出たらしい。ちなみに、59円以下と回答した人は59円と回答した人と合わせて21.4%だったことも付け加えておく。そして、全体の平均値は81.22円。なんと80円の値上げは間違っていなかったと言うことにならないだろうか。

それより21円も安い『59円バーガー』はなぜ爆発的に売れないのか?

ここまで安くなってしまうと、価格はもう決め手ではなくなったのかもしれない。はっきり言って、80円だろうが、65円だろうが、59円だろうが、全部安いよ。
実際に、同じアンケートで吉野家とガストの価格に対して、安い・丁度良いと答えた人は9割以上になっている。

では、ほかの要因はというと、あれしかない。食品に対する『品質』・『安全性』。

本当に59円まで安くできるの?原材料ケチってるんじゃないの?わけのわからないもの食べさせられるのはごめんよ。って、おばちゃんの声が聞こえてきそうだ。
雪印ブランドから始まる偽装事件で、食品に対する信用は崩壊した。まじめに正直に商売やってるものには大きな迷惑だ。

もう亡くなられたが、片倉康雄さんという私の尊敬する蕎麦屋のご主人の座右の銘は

『食はすべてそのもとをあきらかにし 調理をあやまたず そこのうことなければ 味はいすぐれ からだを養い 病をもいやし よく人をつくる』だった。

食品を扱うものにとってはひとつの真理であり、いまさらながら実に重い言葉だと思う。
もしかしたら今の時代、そのもとをあきらかにし、調理をあやまたずそこのうことのないハンバーガーなら、59円より80円の方が売れるかもしれない。
それと、値下げは一時的には客数を上げるかもしれないが、続けることができるかはちょっと疑問だ。いずれにせよ『安い』という話題性だけで、集客できる時代の底は見えたように思う。

しかし、デフレが終わったことにより、すぐにインフレに向かうとは考えにくい。デフレを経験した消費者の目は、とんでもなくシビアになった。なんせ130円のハンバーガーが、59円でも販売できると知ってしまったのだから。

同じく先ほどのアンケートによれば、ある大手ファミレスの1.160円のハンバーグセットに対して、高いと回答した人は、84.6%(値頃価格880円)。また、一般的な喫茶店の400円のブレンドコーヒーに対しては69%の人が高い(値頃価格300円)と回答した。
そりゃそうだ。一杯280円の牛丼と比較すると、1.160円のハンバーグセットはどう考えても高い。400円出して、知りもしない喫茶店でコーヒー飲むなら、59円のハンバーガー食べるよ。飲物とポテトつけてセットにしたって400円いかない。

もはや消費者は、価格につりあうだけの付加価値を持った商品と判断しなければ財布の紐をほどかない。しかも、その目は震えがくるほどシビア。
消費者の中には、純粋に安さに対するニーズは今も脈々と存在するが、ただ安いだけには飽きている。

やっぱりあれか?『早い・安い・うまい』の吉野家のキャッチフレーズは正しかったんじゃないか。

昔は、三拍子そろった店は少なく、その二つを満たしてさえいれば繁盛すると言われた時代があった。しかし、今は『早い・安い・うまい・接客サービス・店の雰囲気・衛生的な店』どれも平均点以上で、しかもどれかが飛びぬけてなければ難しい。

厳しいよ 実際・・・。


kogetudo@izushi.jp

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