『マヨラー列伝』
これから書くことは、私の友人のことであり許可を頂いています。若干の脚色はありますが、すべての「マヨラー」のことを指しているわけではありません。もし、自他ともに認めるマヨラーの方がご覧になり、気分を害されましたらお許しください。
皆さん 「マヨラー」という人たちをご存知だろうか?
数年前からこの言葉を聞くようになり、私のまわりにも数人のマヨラーが存在するが、決して川崎麻世の追っかけではない。
そう マヨネーズ大好き人間のことである。大好きとは言っても限度というものがあるが、彼らにはそれが欠落している。
とにかく、なんでもマヨネーズなのである。
彼らには、「Myマヨ」というものがあり、食卓のそばには必ず自分専用のマヨネーズが常備されている。朝からサラダにマヨネーズこれは当たり前 サラダと一緒の皿にあるハムエッグに醤油を少々とマヨネーズをむにゅむにゅむにゅむにゅ
「おいおいちょっと入れすぎちゃうか」
と思ったら今度はおもむろに御飯にかけだした。朝から絶好調である。
ごはんにハムエッグ、なんだか少食に聞こえるが、もちろん量もはんぱではない。それに比例してマヨネーズの量も増えていく。
日本食の白米と洋食のハムエッグ 和・洋の見事な競演がマヨネーズに埋め尽くされた。
「朝ごはん食べてんの? マヨネーズ食べてんの? そんな質問は彼らには愚問なのだ。」
私の友人に、酔った勢いで一味唐辛子(七味じゃないよ)を1本うどんにかけ、汁まで完食した香辛料大好き人間がいるが、それとはぜんぜん次元が違う。事実、彼の食べているときの顔は『鬼』のような形相だったし、翌日 肛門が痛くて仕事にならなかったらしい。それにくらべ『マヨラー』は食べていることが幸せなのだ。薄ら笑みさえ浮かべている。
さてお腹も一杯になりごちそう様。『マヨラー』の皆さんは、学校に会社に出かけていく。 とっ その手にぶら下げているのは、お弁当ではないか。
きょうのおかずはなんだろな?
なーんだ普通のお弁当だ。
と思った袋の底に、キューピーさんの印刷してある携帯用のマヨネーズ発見。しかもその数 1・2・3・・・6・7・8 じゅじゅじゅ10袋
お弁当にかけるには おおすぎとピーコ。
いくらなんでも多いぞ。
と思っていたらもう10:00時 おもむろに携帯用マヨネーズを取り出し、吸い付いたではないか。 そうか!!間食だったのか。
『マヨラー』の間では、マヨネーズは、すでに主食となりつつある。そのうち、ウイダーインゼリーの代わりに木村拓哉がマヨネーズくわえながら走り、引ったくりを追いかけるCMができるかもしれない。恐るべし『マヨラー』。
5袋を間食として平らげ、残りでお弁当を埋め尽くしたマヨラーは、無事 禁断症状を訴えることなく帰宅する。
15:00 ちょっと小腹がすく時間 戸棚を探すが何もない。 とっ おもむろにどんぶりを取り出し御飯を入れた。その上に醤油を少々混ぜ込んだマヨネーズを一面に塗りたくり、レンジで‘‘チン‘‘
『うに丼』の完成。 私の脳みそも、うに状態
そういえば、以前テレビでそんなことをやっていたような気がしたが、わが目を疑った。
もう一度言おう 恐るべし 恐るべし『マヨラー』なのだ。
そうこうしているうちに夕食なのだが、 おっ 今日は外食のようだ。しかも寿司屋だ。さすがにマヨネーズの出番はないか・・・
「あまかった」
セカンドバックの中にちゃっかりとマヨネーズが忍ばせてある。しかも、食卓用よりちょっと小さめのミニタイプ。 オシャレだ。
そして、最初に注文した指し身の盛り合わせに、デコレーションケーキに生クリームをつけるかのようにトッピングしていく。
カウンターの中の寿司屋のおやじの体が小刻みに震え、手のひらはグー状態。一触即発の状況においても『マヨラー』は常に平常心。
なぜなら、こんなことは日常茶飯事 もっと過酷な修羅場をも乗り越えてきているからである。
『作り手のことなんか知ったことか 僕が美味ければいいんだよ』
経験に裏打ちされた言葉は強い。鉄壁の座右の銘である。これには頑固一徹のおやじも観念したかのように、うつむき加減に品物を出していく。
そして『マヨラーは』、手の込んだ胡麻豆腐にむにゅむにゅ、こ洒落た盛り付けの天ぷらにむにゅむにゅ、うまみがこぼれ出そうな出し巻き卵にもむにゅむにゅ。
むにゅむにゅ むにゅむにゅ むにゅむにゅ むにゅむにゅ
寿司屋のおやじは放心状態
が、しかし 使いすぎたのか寿司とあがりを注文するころにはマヨネーズが底をつく。
寿司屋のおやじの目が光る
『なに握りやしょ』
『う〜ん 海老とかんぱち それからやっぱり最後はトロかな』
おやじの手の動きも心なしか軽快だ。
『へいお待ち』
生きのいいネタの寿司がカウンターに並ぶ。
そうなのだ。寿司って本来こうあるべきなのだ。カウンターに座った客とおやじの真剣勝負
『うわー美味しそう お父さん お父さんのマヨネーズ使うよ』
オヤジおまえもか・・・
気がつくと知らぬ間に封の切ってないマヨがカウンターにおいてある。 おまえはマギー司郎か。
海老の上にマヨネーズを乗せて海老マヨ〜 あぶらの乗ったかんぱちがマヨネーズをはじく 圧巻は、さしの入った中トロに真一文字に乗っかったマヨネーズ
さしものオヤジも堪忍袋の緒が切れた。お金は要らねえから帰っとくれ。
翌日から店前に『マヨラーお断り』の看板が立てられたことは言うまでもない。
最後に、マヨラーには『僕』という言葉が良く似合う。私でも俺でも小生でもない。やっぱり僕である そう感じるのは私だけだろうか。
マヨネーズ好きの方から非難を浴びそうなことを書いたが、実際にはかなり多くの人にマヨネーズは支持されている。
外食産業が、新製品を開発するとき ほとんどの商品にマヨネーズ・卵・チーズが組み込まれ、特に若者からこの3種類は強く支持されている。ヒット商品には何らかの形で使われているはずだ。
ここまでではないにしろ、かく言う私も嫌いではない。いや好きなほうだと思う。調味料?として日本の食卓に定着しているのではないだろうか。ただ、気になるのが油の量とカロリーの高さだ。この2つを下げて美味さは残す。そんなことができないだろうか。
昔のことは分からないが、調味料として塩が登場した時は、とりあえず何にでも塩、砂糖が誕生したときは何にでも砂糖だったんではなかと思う。
日本には醤油と味噌という万能調味料があるが、『味噌ラー』『醤油ラー』なんて人がいてもおかしくないし、実際 日本人はそうなんじゃないだろうか。御飯に醤油をぶっ掛けて食べる人もあるし、みそ汁のなたに御飯を入れて食べる人もいる。
もう少し客観的にマヨネーズを考え直してもいいかもしれない。
それから、最近『ケチャラー』という言葉を聞いた。ケチャップ大好き人間のことだ。
ケチャラー列伝も、資料がそろい次第書いてみたいので、エピソードをご存知の方はぜひ教えていただきたい。
kogetudo@izushi.jp